ドライバー募集「残業が月60時間しかないのに人が集まらない」

ドライバー経済

来年にも人手不足で大きなダメージがあると言われる物流業界ですが、その有り得ない労働環境を垣間見られる記事がありました。

帰宅できて、残業も月60時間程度、完全週休2日制

ドライバー不足に悩む運送会社 「60歳でも若いほう」|物流ニュース|物流ウィークリー
ドライバー不足に悩む運送会社は多い。大阪府泉北郡で鋼材輸送を展開する運送事業者では、大型ドライバーの採用を考えているが、「ここ3か月、人材を募集しても、まったくと言っていいほど反応がない」と驚きを隠せない。同社社長は、「大型平車での近距離輸送、毎日帰宅できて、残業も月60時間程度、完全週休2日制という内容で募集をかけて...

ドライバー不足に悩む運送会社は多い。

大阪府泉北郡で鋼材輸送を展開する運送事業者では、大型ドライバーの採用を考えているが、「ここ3か月、人材を募集しても、まったくと言っていいほど反応がない」と驚きを隠せない。

記事はこのように始まっています。

確かに運送業はどちらかと言えば選ばれない職業でしょう。ですが経済環境も悪化し、ホワイトカラーと呼ばれる職種もAIに取って代わられる未来が現実になりつつある今、選択肢のひとつになる要素はあるはずです。(メガバンクさえ、窓口業務のAI化を見据えて早期退職を募集しています。)

ではなぜ、3ヶ月も求人に応募がないのでしょう。記事は続きます。

「大型平車での近距離輸送、毎日帰宅できて、残業も月60時間程度、完全週休2日制という内容で募集をかけているが、何の反応もない」と話す。

毎日帰宅できる、これは当然のことではないでしょうか?なぜ応募に向けたアドバンテージと思えるのでしょうか。

完全週休2日制については、求人誌を見るとまだ「隔週2日制」「シフト制で月4日休み」といった募集が見られるので、少しだけ良心があるかもしれませんね。

苦痛

労働者は基本、半日は仕事な

極めつけは残業も月60時間程度

完全週休2日制であれば月の勤務日数は概ね22日です。つまり毎日3時間程度残業ということになります。

一般に勤務時間は8時間、それに休憩時間が1時間なので拘束時間は9時間となります。それに3時間の残業が入ると、拘束時間が12時間、つまり半日を仕事だけに費やすのです。

残りの時間から睡眠、通勤時間、食事や入浴を引くと、平日は仕事だけで終わってしまいます。

こういった求人募集に疑問を持たない経営者が跋扈することこそ、日本の産業構造の問題だと思います。

運送費の値上げや配送日数を荷主と交渉する、あるいは給与を下げる代わりに拘束時間を減らし、稼動ドライバーを増やすといった経営を考えるべきだと思います。

もちろん理想論との非難もあるでしょうが、労働者を犠牲にする雇用はそろそろ断つべきです。

一部、週休3日制ただし1日10時間労働という求人も見かけます。労働基準法に基づき週40時間労働ですから、違法ではありません。働く側も4日間は心を無にして働き、代わりに3日休むという選択ができるわけです。

行政の対応①口先だけの働き方改革

また、ホワイトカラーやブルーカラーを問わず日本人労働者のQOL低下に最も影響を与えたのは行政でしょう。

政府や厚生労働省は、口では働き方改革と銘打って「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に対応するため、

  • 女性や高齢者が労働市場に参画しやすくする
  • 出生率を上げて生産人口を維持する
  • 生産性を上げる

これらを目標に掲げていますが、経営者に阿って実効性のある施策を行わず、みなし残業のような脱法がまかり通り、労働者にすれば結婚や子育てをするお金も時間も無い、かろうじて女性の労働市場参画を考えれれば公金の無駄遣いしかしない有様です。

その上で外国人労働者の受入れ論議とか、冗談で政治をしないでくれって感じですね。

行政の対応②労働者の過労死を推奨

また、個人(自然人)が他人を精神的に追い込んで殺した場合には殺人または傷害致死といった重罪となります。執行猶予がつくこともありますが故意と責任能力によっては実刑となり少なくとも数年は社会生活をできません。

ところが、法秩序の維持を図るはずの法務省も、その特別の機関である検察庁も法人に甘く、法人が従業員に対して奴隷的な拘束を行い、その従業員が過労死をしても自然人の実刑のような「数年間経営を行ってはいけない」といった制裁は無いのです。法人なら人を殺したい放題、賠償金を遺族に払うだけで済むわけです(電通のように、少なくとも2人以上殺している場合、個人なら下手したら死刑です)。

かく言う私も一時期そういう会社に居ましたが、さっさと辞めました。もし今、みなし残業やサービス残業で自分の時間が持てていない人は一度、給与を実労働時間で割って時給換算をしてみましょう。

日本を取り巻く労働環境

まだまだ団塊に対する憤りなどきりは無いですが、今回のドライバー募集の記事が余りにも酷すぎたので、その部分だけにスポットを当てて終わりたいと思います。

実際、このような求人はWEBでも紙媒体でも大変多く見かけます。

衰退する国力には相応の理由があるわけですね。

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